東京都の緊急一時避難施設75カ所追加指定と百貨店・地下空間の官民連携を解説する記事
シェルター

東京都が緊急一時避難施設を75カ所追加し計4,684施設へ — 百貨店・地下空間との官民連携と容積率緩和インセンティブの現在地

2026年6月4日7分で読了

2026年3月31日に政府が「シェルター確保基本方針」を閣議決定し、緊急一時避難施設の整備目標が市区町村単位での全住民カバーへと一段引き上げられました。その先行事例として注目されるのが東京都です。都は緊急一時避難施設を新たに75カ所追加指定し、総数は4,684施設に到達。全住民を収容できる規模を確保しました。本記事では、百貨店や駅周辺まちづくりといった民間施設・官民連携の具体像、容積率緩和や表彰制度といったインセンティブの現在地、そして建設・設備業者にとっての需要を解説します。

都市の高層ビル群と地下空間を活用した防災インフラのイメージ

1|東京都が75施設を追加指定 — 計4,684施設で全住民分を確保

1-1 今回の指定で何が変わったか

東京都は2026年3月、国民保護法に基づく緊急一時避難施設を新たに75施設(民間35施設+公共40施設)指定したと公表しました。これにより都内の指定施設は総数4,684施設に達し、全住民を収容できる規模が確保されたことになります。

項目内容
新規指定数75施設
うち民間施設35施設
うち公共施設40施設
指定施設総数4,684施設
収容規模都内全住民を収容できる数を確保

※出典:AI Government Portal「【東京都】緊急一時避難施設の指定」リンク

1-2 緊急一時避難施設とは何か

緊急一時避難施設(用語解説)
国民保護法に基づき、弾道ミサイル攻撃などの際に爆風や破片による直接被害を一時的(1〜2時間程度)に軽減するための避難先です。コンクリート造の堅ろうな既存建築物や、地下街・地下駅・地下道といった地下空間を活用して指定されます。地震や津波などの避難場所とは法的な位置づけが異なります。

東京都の防災ホームページでも、令和8年度に都が新たに指定した緊急一時避難施設の一覧が順次公表されており、最新の都内避難施設一覧は令和8年5月22日時点のものとして整備されています。

※出典:東京都防災ホームページ「国民保護の避難施設(緊急一時避難施設含む)一覧」リンク

2|今回の目玉は「百貨店」と「駅周辺まちづくり」連携

2-1 昼間人口が集中するエリアを重点指定

今回の指定で特徴的なのは、日中に屋外の歩行者が多いエリアを重点に、民間施設を組み込んだ点です。都市部では夜間人口より昼間人口がはるかに多く、勤務者や買い物客・観光客が屋外にいる時間帯にこそ近くの堅ろうな建物への避難先が必要になります。今回の追加指定は、こうした昼間人口の防護を意識した配置になっています。

2-2 大手百貨店と有楽町駅周辺の連携

民間施設の中核として、大丸松坂屋・高島屋・三越伊勢丹といった大手百貨店が体系的に指定されました。さらに有楽町駅周辺まちづくり推進協議会との連携による「エリア単位」の指定も行われ、個別の建物だけでなく地区ぐるみで避難受け入れ態勢を整える方向性が示されています。

連携の形具体例狙い
大手百貨店の指定大丸松坂屋・高島屋・三越伊勢丹など来店客が多い堅ろうな建物を昼間の避難先に
エリア単位の指定有楽町駅周辺まちづくり推進協議会と連携地区全体で避難受け入れ態勢を構築
地下空間の活用地下街・地下駅・地下道爆風からの一時的な防護を確保

※出典:AI Government Portal「【東京都】緊急一時避難施設の指定」リンク

都市の建設現場と防災インフラ整備のイメージ

3|国の基本方針が後押し — 市区町村単位で全住民カバーへ

3-1 2030年までに人口カバー率100%(市区町村単位)

東京都の動きは、国の方針転換と歩調を合わせています。政府は2026年3月31日に「シェルター確保基本方針」を閣議決定し、2030年までに市区町村単位で全住民を収容できる数を確保する目標を掲げました。従来は都道府県・政令指定都市単位での100%が目安でしたが、より細かい市区町村単位へと基準が引き上げられた形です。

背景には実績の積み上げがあります。都道府県・政令指定都市単位では、2026年4月時点で人口カバー率100%を達成できる見込みとなり、これを踏まえて目標が格上げされました。

※出典:時事通信「市町村単位で全住民収容 シェルター方針を閣議決定」2026年3月31日 リンク

3-2 全国の指定状況と地下施設の不足

2025年4月時点で、緊急一時避難施設は全国で約6万1,000カ所が指定されています。その内訳を見ると、堅ろうな地下施設はまだ少数です。

区分箇所数(2025年4月時点)
緊急一時避難施設 総数約6万1,000カ所
うち公共施設約5万4,000カ所
うち地下施設約4,000カ所

地下施設の人口カバー率は5.5%にとどまっており、爆風や破片から確実に防護できる地下空間の確保が今後の大きな課題です。だからこそ、東京都のように民間の堅ろうな建物・地下空間を取り込む官民連携が重みを増しています。

※出典:時事通信「市町村単位で全住民収容 シェルター方針を閣議決定」2026年3月31日 リンク/日本経済新聞「日本型シェルター 有事と災害時を兼用 既存の地下施設活用へ」リンク

4|民間参入を促すインセンティブ — 容積率緩和と表彰制度

4-1 デュアルユースを前提にした「日本型シェルター」

デュアルユース(二重用途)とは
ミサイル攻撃などの有事と、地震・津波・豪雨などの自然災害の双方に同じ施設を活用する考え方です。基本方針では「武力攻撃事態から自然災害まで」シームレスに対応する方針が示され、帰宅困難者の一時滞在施設といった平時の機能とも組み合わせる方向が打ち出されています。整備コストの効率化と施設の稼働率向上を両立させる狙いがあります。

政府は地下を含む民間施設をシェルターに指定し、有事の際の転用を促進する方針です。地下鉄駅や商業ビルの地下駐車場といった施設の洗い出しが進められてきました。

※出典:日本経済新聞「日本型シェルター 有事と災害時を兼用 既存の地下施設活用へ」リンク

4-2 容積率緩和・表彰制度というインセンティブ

民間事業者の参加と投資を引き出すため、基本方針には次のようなインセンティブ措置が盛り込まれています。

  • 容積率の緩和 — シェルター機能を備える建物に対する建築上の優遇
  • 表彰制度 — 取り組む事業者を認定・表彰し参加を後押し
  • 多機能利用の促進 — 帰宅困難者対策の一時滞在施設などとの兼用

一方で、課題も指摘されています。具体的な補助金や財政支援の枠組みはまだ明示されておらず、防護性能の高いシェルターをどう整備するかは今後の実施方針に委ねられています。技術的な仕様や定義、優先的に整備すべき地域については「1年後を目途に」明確化する方針です。

※出典:J-Shelter「【閣議決定!】地下シェルター整備へ政府が基本方針を発表!市区町村単位の人口カバー率100%を目標に」リンク

5|建設・設備業者にとっての需要

5-1 既存施設の改修と認定対応工事

東京都の指定拡大が示すように、シェルター確保の主軸は「新設」よりまず「既存の堅ろうな建物・地下空間の活用」です。公共施設や民間ビルを避難施設として機能させるための改修・対応工事が、当面の中心的な需要になります。

領域具体的な需要関連事業者
民間施設の指定対応百貨店・商業ビル・地下街の避難受け入れ整備、誘導サイン・案内建設・設備・サイン
既存公共施設の改修換気・備蓄スペース・出入口対策の追加建設・設備工事
地下空間の活用地下駐車場・地下街のシェルター対応工事建設・設備・コンサル
設備・機器換気・非常用電源・備蓄管理などメーカー・販売代理
計画策定支援自治体・事業者向けの整備計画コンサルティングコンサル・設計事務所

5-2 自治体・民間との早期連携が鍵

先行者が有利な構造
シェルター整備は「指定→設計→施工→運用」と続く長期プロジェクトです。東京都のように官民連携で先行する自治体・エリアでは、初期の整備計画に関わった事業者が、その後の拡大フェーズでも継続的に関与できる可能性が高くなります。

容積率緩和や表彰制度といったインセンティブは、自社施設をシェルターとして登録する民間企業にとって、BCP(事業継続計画)強化と企業ブランド向上の両面でメリットになります。建設・設備業者にとっては、こうした民間企業の動きを受注機会につなげる視点が重要です。

まとめ

この記事のポイント

  • 東京都は2026年3月、緊急一時避難施設を75施設(民間35+公共40)追加し総数4,684施設に到達、全住民分を確保
  • 今回の目玉は昼間人口が多いエリアの百貨店(大丸松坂屋・高島屋・三越伊勢丹)と有楽町駅周辺まちづくりとのエリア連携
  • 国は2026年3月31日に基本方針を閣議決定、2030年までに市区町村単位で人口カバー率100%を目指す
  • 地下施設のカバー率は5.5%にとどまり、民間の堅ろうな建物・地下空間を取り込む官民連携が重みを増している
  • 容積率緩和・表彰制度がインセンティブの柱だが財政支援は未明示、建設・設備業者は既存施設の改修・認定対応と早期連携が需要の入口

WiZNAVIでは、国の実施方針の具体化や各自治体・民間の官民連携の動向についても随時お伝えしていきます。

WiZNAVI 編集部

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